超音波探傷試験(UT)とは︖ |非破壊検査技術コラム 原理から手法、メリットまでわかりやすく解説
製品の品質管理や安全性の確保に欠かせない「非破壊検査」。
その中でも代表的な手法である超音波探傷試験(UT検査)について、
わかりやすく解説します。

1. 超音波探傷試験(UT検査)の概要
超音波探傷試験(Ultrasonic Testing:UT)とは、超音波が物体の中を伝わる際の音響的な性質を利用して、製品を壊さずに(非破壊的に)内部のきずや材質を調べる検査手法です。
製品を壊さずに内部品質を確認できるため、不良品やトラブルのリスクを低減できます。
JIS規格(JISハンドブック非破壊検査2025)では、「超音波を試験体内に伝播させたときに試験体の示す音響的性質を利用して、試験体内部のきず又は材質を調べる非破壊検査試験」と定義されています。
超音波とは、人間の耳には聞こえない20kHz以上の高い周波数を持つ音波のことです。
身近な例では、以下のようなものに活用されています。
- 妊婦さんの「エコー検査」: おなかの中の赤ちゃんを観察する際に、超音波の反射を利用しています。
- 動物の能力:イルカやコウモリは、超音波を発して周囲の状況を把握しています。
2. UT検査の原理:なぜ内部のきずがわかるのか︖
UT検査は、試験体内部のきずや底面で反射した「超音波反射(エコー)」を利用して、 内部の状態を確認します。
- 超音波の送信:
「探触子(たんしょくし)」と呼ばれるセンサーを使用し、試験体の内部に超音波を送り込みます。 - 反射の受信:
送られた超音波は、試験体の底面や内部にある「きず」に当たると反射し、エコーとして戻ってきます。 - 解析:
この反射エコーの「大きさ」と、戻ってくるまでの「時間」を計測することで、きずの位置や形状を推定することが可能です。
この方法により、目に見えない内部欠陥の有無を非破壊で確認できます。
3. 主な探傷手法とそれぞれの特徴
試験体の形状や検査目的に合わせて、主に垂直探傷法(すいちょくたんしょうほう)と斜角探傷法(しゃかくたんしょうほう)の2つの手法が使い分けられます。
試験体の表面に対して超音波を垂直に伝播させて内部のきずを確認する方法です。
- 特徴:
超音波を探傷面に対して垂直に入れ、内部きずの確認を目的とした検査手法です。 - 検出できるきず:
材料内の割れ(水平割れ)やスラグ巻き込みなどが検出可能です。 - 主な用途:
配管や鋼板などの母材の検査や、火力発電所や原子力発電所、航空機部品などの製造時検査、保守点検などに適用されます。
垂直探傷法の試験イメージ
垂直探傷法の測定結果イメージ
試験体の表面に対して超音波を斜めに伝播させて内部のきずを探傷する方法です。
きずの位置は以下の公式で求めることができます。
きず位置d = W × COS θ
探触子を前後に走査し、エコーが高い場所の y と W を測定することで、きずの位置 d が推定できます。
- 特徴:
超音波を探傷面に対して斜めに入れ、内部きずの確認を目的とした探傷方法です。
入射する角度は探触子によって決められており、検査対象の厚みや形状、確認したい位置によって使用する角度を変更します。一般的な入射角は45°、60°、70°です。
開先部や溶接部の斜め方向に発生するきずに対し、超音波を効率よく当てることができます。 - 検出できるきず:
割れ(縦割れ)、スラグ巻き込み、溶接内の内部のきずなどが検出可能です。 - 主な用途:
溶接部の検査や、垂直探傷法が困難な場所の検査に使用されます。
斜角探傷法の試験イメージ
斜角探傷法の測定結果イメージ
4. 高度な検査技術
TOFD/UT検査技術
超音波探傷手法の一種であるTOFD法は、簡便で高精度な探傷が可能です。一対の発信および受信用の2つの探触子を対向させて配置して、被検査断面を透過させるように超音波の送受信を行います。
超音波フェーズドアレイ検査技術
素子を多数配列(アレイ化)した特殊な探触子を用い、各素子が発信する超音波を結合して1つの超音波ビームとします。各素子の発信タイミングを制御することで、超音波ビームの伝搬方向および集束深さを操作できます。これにより、超音波の減衰やノイズが大きい材料などに対する超音波探傷も可能となります。
水浸法UT検査技術
被検査物を水中に浸し超音波ビームを絞ることにより構造物の表面・裏面および内部のきずの精密な検査ができます。非鉄金属、航空・宇宙機器関係の部品の精密検査などに有効です。
5. 内部きずを対象とした時のUTとRT(放射線透過試験)の違い
- 検査対象
- 内部きず(層間剥離、鋳巣、割れ、ブローホール、溶け込み不良、融合不良、スラグ巻き込み、管内面き裂、etc.)
| 項目 | UT(超音波探傷試験) | RT(放射線透過試験) |
|---|---|---|
| 適用範囲 | 金属に関わらず、超音波が伝播する材料であれば、きずの検出が可能である。 超音波が散乱する材質は探傷困難である。 表面に凹凸がある場合や塗膜がある場合は、超音波の減衰が激しいため、正確な検査が不可能である。 |
材質を問わずに検査可能である。表面の凹凸に関わらず検査可能である。 |
| 検出されるきず | 面状に広がるきずを得意とする。また、体積を持たないきずも探傷可能である。 球状のきずは、超音波の反射エコーが得られにくいため、検出困難である。 |
体積きずを得意とする。照射方向に垂直な面を持つ薄いきずは、検出が難しい傾向がある。 |
| 試験結果 | きずの位置、深さの把握は容易であるが、形状の把握は困難。 | 検出されたきずは、周囲の形状等を含めそのままフィルムに投影されるため、きずの平面位置や形状、寸法の把握が容易である。しかし、深さの把握は困難。 |
| 試験環境 | 時間・場所の制約が少なく、現場工程等に組み込みやすい。 探傷器もコンパクトであり、持ち運びが容易である。 超音波は人体に悪影響がないため、安全区域を設ける必要がない。 |
試験に必要な機材が多く、ある程度の人員と時間が必要である。放射線安全管理上の制約が多く、作業できる時間・場所が限定される。放射線源側とフィルム側の双方にアクセスできる必要があるため、図面や現物で撮影配置等の事前検討が必要。 |
6. 超音波探傷試験-Q&A
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Q
UT(超音波探傷試験)でどんなきずが見つかりますか?
A金属内部や溶接内部における空洞や剥離などのきずを見つけることが可能です。
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Q
UT(超音波探傷試験)は誰でもできるものですか?
A専門知識と技術が必要不可欠です。弊社では、JIS規格に基づいた、超音波探傷試験技術者の資格を所持した技術者が実施します。
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Q
UT(超音波探傷試験)はどれくらいの厚さまで検査できますか?
A数ミリから数百ミリまで対応可能です。しかし、材質や検査手法により異なるため、ご相談ください。
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Q
UT(超音波探傷試験)はどんな業界で使われますか?
A製造業(自動車・造船・鉄道・半導体・鉄鋼・航空・宇宙)、エネルギー産業(電気・石油・ガス)、建設業など、幅広い分野での保守点検に使用されています。
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Q
検査できない素材はありますか?
A一般に、多孔質材料、複合材料などの超音波が伝わりにくい素材は検査が困難です。検査したい材料については、ご相談ください。
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Q
きずの大きさは正確にわかりますか?
Aきずの位置や深さは比較的正確に判定できますが、形状の把握は難しい場合があります。
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Q
何ミリくらいのきずまで見つけられますか?
A1ミリ程度のきずまで検出可能です。使用する機材や探触子、検査方法によっても異なるため、ご相談ください。
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Q
表面のきずも検査できますか?
A基本的にUTは内部きずを得意としているため、表面きずの検出には不向きです。表面きずを見たい場合は、PT(浸透探傷試験)やMT(磁気探傷試験)、ET(渦電流探傷試験)を推奨します。
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Q
塗装の上からでも検査は可能ですか?
A塗膜が厚い場合や、表面が凹凸である場合、超音波を試験体に伝播させることが困難です。よって、検査精度が著しく低下するため、塗膜上からの検査は推奨していません。
7. 技術資料
8. IHI検査計測の検査サービス
弊社では、今回ご紹介したUT(超音波探傷試験)を含む、
NDI(非破壊検査)5種すべて(PT、MT、UT、RT、ET)に対応しています。
幅広い対応力
厚さ計測、表面きず検査、内部きず検査、塗膜厚さ計測など、お客様の品質管理課題を解決します。
柔軟な体制
出張検査と持ち込み検査の両方に対応しており、高度な検査装置を用いて最適なソリューションをご提案します。製品の内部品質に不安がある、あるいは高度な非破壊検査を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
技術資料に関するご質問、お問い合せ事項がございましたら、ご連絡ください。
営業統括部
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